自然農の実践家として長年の実績をお持ちの美斉津さんにお越しいただきました。
美斉津さんは、顔の見える関係を基本とした提携方式により、自然に即した栽培方法により
育てた野菜を、長年にわたって提供をされています。
海外で開かれる有機農家の国際会議などでは、"Teikei"という分科会があるほど、提携方式は世界的に広がっています。
美斉津さんは果樹を植えて 森のような生態系で耕さず 草や虫を敵とせず 持ち込まず持ち出さない自然農を実践されています。


美斉津さんは信州小諸にて自然農を専業としている農家さんです。自然農を始めたきっかけやこれまでの農業への取り組みから生じた直感などを淡々と語ってくださいました。

代々農家だった土地を引き継いで、レタスなどの高原野菜ばかりを栽培することに疑問を感じ、また農薬を使用することでの家族や自分自身に体調の変調を感じながら農薬使用する慣行農法に疑問を感じ、仲間とともに有機農業を始めたそうです。そこでは東京の消費者を相手にしての金銭のやり取りなどに疑問を感じ(自分の作った野菜に値段が付けられること、排気ガスをまき散らしながら朝から晩まで「健康な野菜です」といいながら売り歩くこと)、また有機農法への疑問(安全な食べ物という結果だけにこだわり、ビニルマルチを使用したり、堆肥などを使用して土地の力をかえてまで作る方法など)などから自然農の存在を知り、徐々に試しながら有機農法から移行していったようです。
自然農を始めた当初はやはり出来上がりがこれまでの有機と比べるとどうしても安定せず、収量も少なかったようです。でも3年~4年して土地の力がつくようになってからは収量もある程度安定してきたとのことでした。
また流通システムについても既存の方法ではなく、できるだけ近郊で野菜を求めておられる世帯と契約して未斉津さんの畑でとれた作物をそのままおろし、その作物の値段で金銭のやり取りをするのではなく、生活費として世帯から毎月お金をいただくというやり方をしているとのことでした。「食べ物は商品ではない」とは美斉津さんの名言です。
また美斉津さんは農作物以外にも加工食品(みそ、醤油、梅干し、干し柿)なども自作されているようで、自分の食卓に並ぶ物はすべからく、契約している世帯にも分けている、つまりは自分の食卓と契約している世帯とが直結しているとのことでした。とても安心なシステムだと思います。作り手の「顔」を知ることができるのは、私たち食物消費者にとっては最も大切なことだと思います。
一通り、美斉津さんの話を伺ってからは私たちの質疑にも応じていただきました、それぞれの質疑にも「うーん、そうだなぁ・・・」と親身になって答えてくださっていました。
そこで話を伺っての感想は、感性に素直にしたがって生きておられるんだなぁということです。足りない物を補いながら、自分の生活を創っていくことを本当に楽しんでおられるようでした。自分もこんな生活と価値観を身につけたいと思うのですが、なかなか未斉津さんのような生活に踏み切るにはとても勇気がいるのではないかとも思いました。循環する生活を営む上での一つの到達点のようにも感じます。何事もお金に換算して生活している私たちは、本当に恵まれているのか。物にあふれ、高度にシステム化され無駄のない時間の中で生活しているけれども、いつまでたっても時間の足りない構造の中では有意義な時間を過ごすことはとても難しく贅沢なことだと思いがちです。でもすぐ近くに有意義な時間を過ごしている人たちは確かにいるのだということを感じさせられました。